映画「チャットルーム」ネタバレと感想 大人はくそったれだけど子供は?
ここでは映画「チャットルーム」のストーリーやその魅力を紹介しています。
チャットルーム
自由を手に入れた10代の背伸びと欲望。
日本人が監督しているイギリス映画。
色や音も素晴らしくて、なぜ他の作品を作っていないのだろうかと思う。
出演者もいい役者ばかりである。
ストーリー
一つのチャットルームを開いた主人公。
部屋の名前は「チェルシーティーン!」。
それを見て集まった5人で他愛もない会話を始める。
集まったのは
ウィリアム
リストカットをする引きこもりでチャットルームの主催者の少年
エヴァ
モデルをやっているがそれに疲れている少女
ジム
シャイで友達がいない少年
エミリー
陽気なパーティーに憧れるが真面目すぎてできない少女
モー
友人の妹に恋してしまった内気な少年
それぞれがそれぞれに問題を抱えながら楽しくチャットしていた。
ウィリアムのポジティブで行動力のあるところにみんな惹かれていく。
彼に言われてそれぞれが現実世界で今までやったことのない行動をとっていく。
ある時ウィリアムはエヴァの部屋(個人ページ)を見つけ勝手に入って入り浸る。
はじめは警戒するエヴァもなんとなく受け入れる。
「誰が嫌いか」で盛り上がっている時、ジムは何も話さなかった。
「誰が嫌いなの?」とエヴァに聞かれジムは「自分が嫌いだ」という。
ジムは幼い時に父親が蒸発し、それ以来母と暮らしている。
しかも父と二人で遊園地に行った最中に帰ってこなくなったのでそれがトラウマになり、抗鬱剤を飲んでいた。
しかし、ウィリアムに「向き合わないとだめだ」と言われ薬を捨ててしまう。
そこからどんどんジムを追い詰めるウィリアム。
それを知った他の人はなんとか止めようとするがウィリアムのハッキング能力で妨害される。
ならばと現実世界で助けようとする。
ウィリアムはジムに自殺する場所を選択させジムは置き去りにされた遊園地を選ぶ。
遊園地でウィリアムは銃を渡す。
それを知った他の三人は公園へ急ぐ。
トイレで自殺しようとするが、引き金が弾けない。
逃げるジムを見つけたウィリアムは走って追いかける。
ジムを捕まえ「過去と決別しろ、引き金を引けば父を殺すことができる」とまくしたてる。
追いついた三人は死んじゃダメと叫ぶ。
銃を捨てるジム。
そこへ警察がやってくる。
銃を拾って逃走しようとするウィリアムだが、警察に「動くな!」と銃を向けられて止まる。
ネタバレ
銃を捨て両手をあげるウィリアム。
その後ろには線路があり、そのまま後ろ向きに落ちて轢かれてしまう。
感想
ネット世界の闇を見事に描いた作品。
暗く澱んでいるがそれだけではないのが印象的。
実は「大人はくそったれ」という共通認識で始まるのだが、最後には「子供だってまともじゃない」という内容というか雰囲気へ変わっていく。
3つのポイントに分けて書いてみます。
1.チェルシーティーン!とは
なぜこの名前で若者が集まったのか。
「チェルシー」とはイギリスはロンドンの街の名前。
「ティーン」はそのまま10代を指す。
さらに「!」をつけることで「イケてる」感を出している。
この「イケてる感」は本当はダサイのだが、その辺に疎いジム、エミリー、モーが入り込む。
逆にエヴァはカッコよく派手な世界に飽きているため違った世界に興味を持ったのだと思う。
「チェルシー」は高級住宅街である。
つまりみんなある程度はいい家庭で育っている。
家族に問題はあれどお金に困っているわけではない。
つまり「貧乏ではないが家族や身の回りに問題を抱えている若者」の集まりなのだ。
*ちなみにジェームズボンドもチェルシーに家を持っている。
2.ウィリアムの狙いとは
自殺志願者のようなウィリアムだが、疑問が残る。
リストカットも中途半端だが、親が心配するのは当然だ。
そのためにセラピーを受けている。
実は5人の中で一番問題ないはずなのに。
つまり、「生きる実感」という雲みたいなものを摘むために他人の自殺動画や多少の自傷行為をしているだけ。
ネットの中ではいじめられている子をそのまま見ているだけで助けず、自殺するのを期待している。
その欲望がエスカレートし、自分主導で誰かを自殺させたいと思っていく。
それがジムを自殺に追いやることヘの動機だ。
チャットルームの参加者を身近な地域の人物に限定したのもそのためだろう。
3.ラストへの不満
他人の心をめちゃくちゃにし、現実世界でも影響を与えたウィリアム。
よく言えば「カリスマ」なのだろうが、彼は自分の欲望が全てだ。
他人のことは考えていない。
それは「引きこもり」という「わがまま」なだけ。
最初はヒーローに思えた相手が実はサイコパスでした、というのがこの映画。
なので最後は化けの皮をはがすけど「それでも大人は愛してくれた」となるのかと思った。
しかし、ウィリアムは自殺してしまう。
自殺はカリスマやヒーローにとって「格上げ」の要素があると思う。
彼は自殺することでその意見、意思、主張が永遠のものになる。
反省させることも後悔させることもできない。
なんだか負けた気分になる。
まとめ
ネットという「自由」な世界。
親からも解放された場所。
そこは制御の甘い子供と狂った大人の巣窟だった。
ネットの「良い」と「悪い」を区別しなければ大変なことになる。
知らない間に追いつめられたり、少女を装ったおっさんと友達になっちゃったりしてしまう。
つまり、現実世界とあまり変わらないというわけだ。
「良い」と「悪い」を判断するのは自分しかいない。
誰もが思っていること、定説的に思われていること。
「大人はわかってくれない」「大人はクソだ」
しかし、この映画では大人の懸命な説得や愛情、信頼が見て取れる。
定説はどんどんねじまがっていく感覚になるこの映画は新しかった。
単純に「主人公イライラする」という人もいそうですがね。
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この記事を書いた人
tetsugakuman
基本的にはダークな映画を好む。
スリラーバイオレンスホラーミステリーサバイバルSFアクションなど。