映画「レリック 遺物」ネタバレと考察 裏テーマは「Y染色体」にある。

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ここでは映画「レリック 遺物」のあらすじやネタバレ、解釈や考察を紹介します。

この映画のテーマ、そして「裏テーマ」とは。

レリック

遺物

「何」が家にやってくるのか?

オーストラリア産ホラー映画。

予告の冒頭で「ヘレディタリー」「ババドック」に続くと書いてありますが、ヘレディタリーは家族の話、ババドックも今作と同じオーストラリアの映画ということで紹介されています。

映画「OLD」もありますが、最近は「老い」をテーマにした映画が多いですね。

あらすじ

おばあちゃんが行方不明だと警察から連絡があり、母親と娘はおばあちゃんの家に行く。

家の中を見てもいない、かわりに物がごちゃごちゃと置かれていて壁にもシミがついたままだ。

しかも、扉には新しい鍵が取り付けられていた。

隣の家に住んでいる18歳の自閉症の青年が顔を出しに来る。

娘「久しぶりじゃん!いつの間にか大きくなって!。」

青年「久しぶり。ちょっと(タバコを)吸わせてよ、もう大人なんだから。」

娘「最近、おばあちゃん見かけた?」

青年「ここにはきちゃダメだってお父さんに言われてたから。」

娘「そうか・・・、何か飲んでいく?」

青年「いや、いいよ。」

そういうと帰っていった。

母親と娘は片付けつづ地域の住民と森の中を探したりしていた。

夜になり、寝ようとするのだか、誰かがいるような音が家の中でずっとなっていた。

翌朝。

お湯の沸く音で母親が目覚める。

ゆっくり台所へ行くと、そこには汚れたままの素足で立つおばあちゃんがいた。

どこに行ったのか、何をしていたのか分からない。

おばあちゃんは優しい孫に自分の大切な指輪をあげるが、翌日になると「盗んだわね!」と怒り出したりして完全に認知症の症状が出ていた。

母親はおばあちゃんを施設に入れようと考えるが、娘は一緒に暮らそうと提案する。

そんな中、なぜ隣の家の青年がおばあちゃんと会わないようになったのか、娘は気になって聞きに行った。

隣人の父「以前、(自分の)息子と(あなたの)おばあちゃんが隠れんぼをして遊んでいた時、息子が隠れたクローゼットの鍵をおばあちゃんが閉めて何時間も出られなくなったことがあったんだ。

私が探しに行くと玄関からでも「助けて」という叫び声が聞こえてたのに、おばあちゃんは知らないと言う。

それで、会わない方がいいって言ったんだ。」

その後もおばあちゃんは怪我をしたまま趣味を続けたり、写真を食べたり、アルバムを埋めたりと常軌を逸した行動を取り続けた。

どうもクローゼットが気になった娘はクローゼットに入っていくと、荷物に隠れて知らない通路があった。

そこを通ると謎の部屋に繋がっていて、気味が悪いから引き返そうとしたが、迷路のようになっていて、きた道が分からなくなってしまった。

その頃、おばあちゃんがお風呂に入っていたが、水が出っ放しになっていることに気づいた母親は様子を見に行くが、なんの返事もかえってこない。

扉の上の小窓から覗き込むとそこには自分の胸を刃物で何度も刺しているおばあちゃんがいた。

母親はなんとかそれをやめさせようとするが、すごい力で倒されてしまった。

謎の空間に迷い込んでいた娘は壁に穴を開けたりなんとか脱出しようとしていた。

すると母親の逃げ惑う声が聞こえた。

謎の空間で母親と出会った娘だったが母親が「あれはもうおばあちゃんじゃない!逃げないと!」と言った。

壁を突き破って元の世界へ戻ったがおばあちゃんはまだ追ってくる。

母親は娘を守るために鈍器でおばあちゃんの頭を強打し、なんとか止めることができた。

娘と逃げようとする母親だったが、母親のメモに「私は愛されている」という文字を見つけ、逃げるのをやめてしまう。

微かに息をしている状態のおばあちゃんをベッドへ連れて行き、剥がれかけの皮膚の下には真っ黒な皮膚があった。

表の皮膚を母親が全て剥がすとそこには真っ黒な人がいた。

娘も戻ってきてその異様な光景を目にする。

母親は黒い人を寝かせ自分も横になる、その母親の横で娘も横になる。

すると・・・

娘は母親の背中が黒ずんでいるのを見つける。

端的ネタバレ

認知症のおばあちゃんをなんとかしようと思ったら、おばあちゃんは何かに怯えていた。

謎を解こうと思ったら家の中の謎空間に囚われてしまうがなんとか脱出。

襲ってくるおばあちゃんを鈍器で殴ったら、おばあちゃんの皮膚が剥がれ、中から謎の真っ黒い人が現れる。

感想

端的ネタバレだけ読むと「どういうこと?」ってなりますよね。

でもこの映画もただ見ると「どういうこと?」で終わってしまいます。

かなり拡大解釈になると思いますが、この映画について読み解いていきたいと思います。

1.映画のテーマは「老い」

基本的にこの映画のテーマは「老い」であり、その中でも「認知症」にフォーカスを当てています。

その「認知症」の部分が普通に見ると「ボケるって怖いね」という感じですが、他のものが作用しているように描かれています。

例えば、おばあちゃんは本当に認知症なのでしょうか。

行方不明だった後、医者の質問には全て問題なく答えられていました。

2.裏テーマは「遺伝」

表のテーマは「老い」でしたが、裏テーマは「遺伝」だと思います。

その根拠は2つあります。

1つ目が副題の「遺物」です。

これは一見「物」かと思いますが、わざわざ使い慣れない「遺物」としているのは「遺伝」にすると分かり易すぎるからだと思います。

ちなみに「レリック」とはどういう意味か調べると。

絶滅しやすい状態におかれている生物種

レリックとは-コトバンク

と出てきます。

この映画でいうと絶滅しそうになっているのはおばあちゃん本人です。

逆に、何が遺物なのかというと、まさに「遺伝子」なのです。

もう1つ。

映画の終わり、エンドロールが始まるとまるで細胞分裂のような映像が出てきます。

どんどん広がっていき、それが結合して神経細胞のような形になります。

しかし、それがパッと途切れてしまう。

まさに遺伝子そのもの。

自分という人格は消えてなくなるが、その根幹は残り続ける。

3.おばあちゃんが怯えている物

おばあちゃんが怯えていた物、それは日本語的な表現で言うと「お迎え」だと思います。

「死ぬ」「お迎えが来る」というのはかなり抽象的な言葉です。

この映画の裏テーマ的に言えば「自分が消えて遺伝子だけが残る」ということです。

そして、おじいちゃんの住んでいた小屋のステンドガラスを実家の扉にはめ込んだのも非常に印象的です。

入り口の窓、それは大切な内部(自分の内側)を見る物ですが、これを「おじいちゃんの窓」にすると一方的な意見(男性の女性蔑視的な)と捉えることもできます。

ちょっと何言っているのか分からなくなってきたと思うので一番大事なポイントを次に説明します。

4.なぜ家族の女性だけが映るのか

ホラー映画「イット・フォローズ」でも同じような手法が使われているのですが、それは映る人と映らない人から読み取ります。

まず、映画の中心は3世代の家族ですが、全員女です。

警察官は男ですが後ろ姿しか写りません。

しっかり映る男は隣の家の父親と青年だけです。

特に青年は自閉症という遺伝的な状況があります。

何が言いたいかというと「遺伝に関して特殊な状況にある人がストーリーにしっかり映る。」ということです。

ちょっとだけ難しい話をします。

生まれてくるときの性別決定はY染色体があれば男、Y染色体がなくてXだけだと女になります。

継承問題で「男しか後を継げない」というのはこのY染色体を継承したいということになるのです。

簡単にいうと「継承されるのはY遺伝子だけ」言い換えると「男の情報は遺伝子で引き継がれるが女の情報は引き継がれない」という感じです。

(性別決定、Y染色体の話は話すと長くなるので是非調べてみてください。)

いやですよね、女である自分は後世に何かを残せない、男だけが残せるというのは。

で、家の中でちょくちょく出てきた黒い影。

あれは「男系の遺伝子(Y染色体)」なのだと思います。

つまり、おじいちゃんですね。

もう死んだはずのおじいちゃんですが遺伝子的にはまだ存在しているのです。

5.最後の黒い人間

もうわかったと思いますが、あれはおじいちゃんだと思います。

おじいちゃんというか、代々の男系遺伝子ですね。

おばあちゃんは消滅しても、その中にはおじいちゃんが生きている。

で、それは母親にも、そして娘にもやってくる運命なのです。

だからこそおばあちゃんはそれが嫌でナイフで刺していたのでしょう。

まとめ

1つだけ伝えておきたいのですが、これは1つの解釈であり、染色体の説明を大幅に省いているため多少誤解を招く表現になっていると思いますが、ここで的確に伝えることは難しいので、その点はご了承ください。

ホラー映画にしてはテーマがしっかりしすぎているけど、ホラー描写もしっかりしています。

異空間に入ってしまった時はびっくりしましたが、ラストもしっかり落ちましたね。

ただ、しっかり考えないと「どういうこと?」で終わってしまうのでもう少しヒントが必要だと思います。

私は、娘がドント・ブリーズの人か気になって仕方がなかったのですが、違いましたね(笑)

この記事を書いた人

tetsugakuman

tetsugakuman

基本的にはダークな映画を好む。
スリラーバイオレンスホラーミステリーサバイバルSFアクションなど。