それは本当に人類の願い? 映画「ヴォイジャー」ネタバレと感想

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ここでは映画「ヴォイジャー」のストーリーや魅力を紹介しています。

ヴォイジャー

凝縮した哲学的な問い

公開初日に見てきました。

結構胸糞な感じだったのですが、ってことは人間自体が胸糞ですよねっていう感じで、やられました。

かなり楽しめましたので後ほど細かい部分で振り返っていきます。

ストーリー

地球は温暖化によって住めなくなってしまう。

宇宙を探した結果、地球の環境に限りなく近い星を発見。

そこに行くには86年かかるという計算だった。

そこで、3世代にわたって人類をその星へ送る計画を立てた。

現在地球にいる人たちは全員地球に残り、計画された子供達だけが地球をでてその星へ向かう。

地球の環境(広さや太陽、匂い)を知ってしまうとプロジェクトがうまくいかないと考えたので、子供達はラボで人工授精され、生まれた時から宇宙船を模した空間で生活させた。

出発の時、唯一1人だけ大人(リチャード)が同行した。

10年ほどが過ぎ、子供達は10代へと成長した。

決まった時間に起き、与えられた仕事をして、適量の食事をとり、何にも疑問を抱かずに生活する。

あるとき、1人の少年(クリストファー)が自分達が毎日飲まされている青い液体がなんなのか、興味が出て調べてみる。

すると「機密情報」としか表示されない。

機械に詳しいクリストファーはなんとかシステムを潜り抜け、情報へ到達する。

するとそこには「感情を抑制し性的な、暴力的な衝動を抑える」と書いてあった。

クリストファーはその時一緒にいた友人ザックとその青い液体を飲まないことにする。

すると2人の感情は豊かになる。取っ組み合いをし、船内を走り回り、雄叫びを上げる。

「最高だー!」

しかし、リチャードには黙っていることにする。

感覚が呼び覚まされていく2人は異性にも興味が湧き始める。

ザックがセラの手を掴む、とリチャードに「おい何をしている、接触はダメだ、ルールが決まってるだろ」と言われる。

しかし、リチャードがセラを自室に呼び、談笑しつつセラの方に手を置くのを見てしまう。

苛立つザックは徐々に感情が抑えられなくなる。

ある時、通信機に障害が起き、船外で直さなくてはいけなくなった。

リチャードはザックを補助に指名しサラが準備を進めた。

1人で準備をしているサラのところにザックが現れ、手を触り、顔を撫で、唐突に胸を揉む。

そこにクリストファーが現れ「やめろ!」というとザックはどこかへ行ってしまう。

この辺りでリチャードはザックやクリストファーが青い液体を飲んでいないことを知る。

ザックがどこかへ行ってしまったので代わりにクリストファーが船外へ出る。

修理を進めていると突然リチャードが何かに襲われたように激しく痙攣し、トラブルが起きる。

すぐにクリストファーが連れ戻すが、唯一の大人であるリチャードは死んでしまう。

規定では新しいリーダーを決めることになっていると知るとザックが立候補する。

しかし、これも規定により投票で選ぶことになった。

結果的に選ばれたのはクリストファーだった。

なんとか秩序を取り戻そうとしていたが、この頃には誰も青い液体を飲まないようになっていた。

自分の仕事をしろとクリストファーが言うが、ザックはそれが徐々におもしろくなく感じ始める。

懸命にリーダーを務めようとするクリストファーだったが、ザックが反旗を翻す。

「俺はもうお前の言うことを聞かない!好きな時に好きな仕事をやる!俺についてきたい奴はついてこい!」

約2/3がついて行ってしまう。

その後は船内はめちゃくちゃ、食べ物は好きなだけ食べ、そこらでSEXをし、嫉妬したら暴力を振るう。

なんとか事態を変えたいと思っていたクリストファーとサラの集団はリチャードが実はザックのせいで死んだという事実を知る。

それは船外活動中、生命維持用に繋がれているケーブルに電流を流せる装置でザックが上限一杯に電流を流したのだ。

この事実をみんなに伝え、みんながザックに不信感を抱いた。

だが、ザックはこう言った。

「確かに、俺がリチャードを殺した。でも、それはみんなのためだ。船外にはエイリアンがいて、それがリチャードに入ったからだ。

なのに、クリストファーは何も考えずに船内に戻ってきた。そしてエイリアンは今船内にいる!」

そういうとそこにいる人を一人一人指差し「お前の中か?」「お前の中にいるんじゃないのか?」と言っていった。

そしてその中の1人を指差し「お前の中だ!」と言い、周りはそいつをリンチし始め、最終的には死んでしまう。

いよいよ手に負えなくなってきたザック達に対応するため、クリストファーは隠されていた武器がある場所のことを思い出す。

その武器を取り出そうとするも、ザックに嗅ぎつけられ、逆に大量の銃を奪われてしまう。

この頃にはザック側以外はクリストファーとサラだけになっていた。

2人は船内を逃げ、船外へ出るための宇宙服があるところまで逃げる。

頑丈な扉も銃で開けてザックは近づいてくる。

クリストファー達は宇宙服を着て待機し、ザックが入ってきた瞬間に船外へ出るハッチを開ける。

気圧の変化で猛烈に風が船外へと吹き抜けるがザックはなんとか掴まっていた。

間一髪ということろで2人はTシャツ姿のザックを宇宙へと放り出したのだ。

その後、クリストファーがリーダーへ戻り、秩序は取り戻された。

元々は人口的に船内で子供を作る予定だったが、今では性行為をへて子供が増える環境となった。

86年後。

人類は、新たな星へたどり着く。

端的ネタバレ

地球が住めなくなってから他の星へ移住することになり子供達と1人の大人が宇宙船で出発する。

薬で感情などを抑制されていると知った子供達は飲むのをやめる。

感情が豊かになり、1人が怒りから唯一の大人を殺してしまう。

その後はルール無用状態が続いたが、独裁者のようになっていた男を殺し、船内に秩序が戻る。

そして、86年後に人類は移住先の星へ到着する。

感想

人間とは何か」という問いを狭い空間と少人数で濃密に描いている作品ですね。

自分的に苦手なシーンがあり目を背けたりもしましたが、こういう問いかけ的映画すごく好きです。

いくつかの角度から振り返ってみましょう。

大人と子供

この映画の大きなテーマの一つが「大人と子供」というところです。

唯一の大人であるリチャードは都合よく嘘をついていた。

さらに、他の人には「他人に触るな」と言っておきながら、自分はお気に入りの子の体(肩)に触っていた。

こういう小さな不信感からリーダーは統率力を失っていく。

この映画では確かに大人は100%正直ではなかったが、それが人というものです。

その中でもかなり誠実に描かれている。

単に「大人は汚い」という描かれ方ではなかった。

しかし、子供達はそれを容認しない。

大人と子供という関係の縮図ですね。

カルトとルール

序盤の船内は不気味なくらい統率が取れていますよね。

もちろん本能を抑制する青い液体のせいではありますが、どことなくルールがカルト的でした。

実は、多くのカルト宗教は厳しい規律、大義のためという思想誘導、そして異性への接触を禁止する。

これが集団をコントロールすためにかなり有効なのです。

じゃあ、後半の無秩序の方が人間的で良いのか?

それも違うと感じたはずです。

果たしてどこまでのルールが必要でどこまで自由があった方がいいのでしょうか。

カリスマと独裁

偉大なリーダー亡き後、新しいリーダーは平凡に見えます。

この映画でも「ただ規律を守るように言うリーダー」よりも「熱意があって魅力的で自由なリーダー」を選んでいましたが、実は私たちも現実世界でそういうリーダーを求めていませんか?

まさにこれはヒトラー的であるのですが、我々はこう言う「魅力的な人=カリスマ」に魅了されてしまうのです。

これは人間の心理に深く関わっているのだと思います。

そして力を得たカリスマはほぼほぼ独裁者になります。

力とは我々が想像する以上に魅力的なのだと思います。

そして、独裁者はその状況を維持するために「恐怖」と「嘘」を操ります。

「恐怖」は暴力や武器、「嘘」はエイリアンと仮想敵を作ること、あとはお互いを監視し合うことです。

これは北朝鮮と同じですね。

知っているのに告発しなければ罰せられるという恐怖。

これで統制は完璧です。

強いカリスマ性には気を付けたいのですが、人類の歴史を見ると我々は尽く失敗しています。

暴力と性

ここは人間の本能についてです。

皆さんは人間の暴力性と性衝動は「しょうがないもの」だと思いますか?

私はそう思います。

しかし、それを抑制するための理性も持っています。

例えば、我々は日常的に道行く人に暴力を振るったり、無理やり性行為を強要しませんよね。

それは理性があるからです。

ただ、別の角度から見てみると、ニュースではそんな報道が毎日のようにされています。

人間の本性はどっちなのでしょうか。

まさにこれがこの映画のテーマです。

我々、人間は醜い動物なのか、それとももっと理性的な存在なのか。

この映画では最後は綺麗に終わらせてくれていますが、ザックの独裁が続いて独裁国家が存続していくというエンディングもあり得ますよね。

これは是非映画を見た人と語り合ってみたいですね。

それは人類の願い?

私にとってこの映画の「裏テーマ」は「人類の願いとは」だと感じました。

第三世代が新しい星についた時、船外へ出たいと思う人はいたのでしょうか?

三世代にもわたって宇宙船の中で暮らしていた人たちにとって、船内こそが「家」ですよね。

「別の星への移住」は地球にいる人類の願いであり、送り出された人たちの願いではありません。

なので、私の予想では新しい(何もない思い入れもない)星へ降り立ったものの、すぐに船内に戻り地球へ引き返したのではないでしょうか。

もし、あなたが知らない国に連れていかれ「ここがおじいさんの生まれた場所よ、だからここに戻ってこられて嬉しいでしょ?」と言われても「別に嬉しくない」って思いますよね

それと同じことが起こると思います。

最後に

かなりストレートに人間性について問いかけている映画でしたね。

基本的なテーマもわかりやすいので終わった後に誰かと議論したくなりました。

裏テーマを感じた時、続編があるならみたいなーとも思いました。

皆さんはどうだったでしょうか?

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この記事を書いた人

tetsugakuman

tetsugakuman

基本的にはダークな映画を好む。
スリラーバイオレンスホラーミステリーサバイバルSFアクションなど。